私のトラベルストーリー

自分を見失ったおぼっちゃまが、ラップで自分探し。

Posted by しんのすけ, せいた on Friday, May 31, 2019

#eftravelstory

UCSBに留学中の友人に話を聞いた。

留学がもたらした彼の心境の変化を綴る。




私という人間


高校は、笑いのスキルで決まるヒエラルキーだった。


自分もその価値基準に沿って生きていた。


ノリがいいことが大事。 人のフリに応えるのが大事。


ただフリに従っていればよかった。


自分はいじられキャラだったということもあり、そんな身のこなしが性に合っていると思っていた。


自分から行動するより、人に従う方が楽だった。



なんとなくの留学だった


大学に入り、ふと、留学に行きたいと思った。


本当になんとなくだった。


留学に必要な英語のスコアを獲るために、

2017年の冬まではTOEFLの勉強に没頭した。


遊ぶ暇のない忙しい日々だった。


年明けには留学の内定が出て、やっと一息。


しかし、そんな安堵も束の間、すぐに大学のゼミの選考が始まった。


また、考える間のない忙しい日々が続く。


そんな日々も6月には落ち着きを迎えた。


英語の勉強やゼミの選考に追われなくなると、

途端に目標を見失ってしまった。



自分が何がしたいか分からない。



周りは就職活動を始め、大人になっていくようだった。


留学で卒業を遅らせるため、就活に縁はなく、取り残されていくようだった。



まずい。


自分の中に危機感が募っていった。




ともだち


危機感が募ろうが、お構いなしに友だちからの誘いは来る。


ノリがいいことがステータス。断るわけにはいかない。


しかし、遊んでいてもなんだか楽しくなかった。


脳裏にあるのは焦りだった。


英語の試験のような、締切のある焦りではないため、

追い込まれているわけではない。


しかし、この漠然とした焦りは消えることはなかった。


あるとき、友だちから連絡が入る。


あまり好きじゃない麻雀に誘われた。



今思えば、断り方も良くなかったかもしれない。


誘いを受けるときもなんとなくなら、

断るときもなんとなく断ってしまった。



「なんで断るの?」



その問いに答えられなかった。


予定はない。締切に追われているわけでもない。

でも断りたい気持ちを言葉で説明できなかった。


ともだちともめた。


そのとき気づいた。

この友だちは、自分が誘えば必ず来るものだと思っていたんだろう。


自分のフリには必ず答えると。



焦燥感が支配する脳裏に、言葉が浮かんだ。



「俺ってなめられてる?」


「都合のいい人間なだけでは?」



自分が分からなくなった。




英語の勉強とかゼミの選考のような、社会的に認められた共通の目標に向かってはいろいろできたが、 自分自身の目標はない。



明確な、自分だけの目標が欲しかった。




渡米


そんな自分の心境なんか関係なく、出国の日は来る。



「自分がしたいことは何か?」



頭を支配していた焦燥感は、いつの間にか一つの問いに変わっていた。




カリフォルニアには乾いた風が吹く。


建物は低く、空は広い。


海が近かった。



自分がちっぽけに感じる。



そんなちっぽけな自分の内面と向き合う。



環境が気付かせたのか、長い思考時間が実を結んだのかは分からない。



問いの答えは存外自分の近くにあった。




ラップがしたい。




ラップは、大学1年生からちょこちょこやっていた。


ラップといっても、バトルに出たり、大きなステージに出たりするわけでもない。


そんなものは遠い憧れで、

ただ、中途半端にやっていた。


自分の中で、そこまでモチベーションは高くないと思っていた。



今まで、ラップを披露する場は友だちとの飲み会だった。


友だちのフリに応えて、まるでネタのように披露していた。



決してかっこいいもんじゃなかった。




ラップ


ちょうどその頃、知り合いの一人が英語でラップの曲を作っていた。


それが、めちゃくちゃかっこよかった。


そのラップを聞いたとき、心が動いた。

これだと思った。


自分自身で何かを発信したいという気持ちと、

大学1年生からやっていたラップ、

留学と英語、


自分の中で全てが噛み合った。


それから、自分で英語のラップを作るのが留学中の目標になった。


自分自身の目標だ。


結果が出るまでやろうと決めた。




しかし、実際に作るとなれば容易くはない。



まずは寂しかった。


毎晩、録音した自分の声を一人で聞いた。

しんどい作業だった。



次に不安があった。


できるかもわからない。やり方もわからない。

まるで終わりが見えなかった。



一番嫌だったのは、

実際に曲ができたところでラッパーになるわけでもない、将来に役に立たないということ。


勉強に時間を費やした方が有意義なのではと思った。




それでも作り続けた。



逃げたくなかった。



あえて、回りにラップを作っていると言いふらし、作り続けた。




実に6か月を費やした。




その日は、友人の家のガレージをスタジオとして借用し、

朝から一人で籠っていた。



明かりのないガレージだった。



自分で用意した機材に囲まれ、一人でマイクに向き合っていた。


お昼過ぎだった。


ついに完成した。


1曲作り終えることができた。



そのとき胸にこみ上げて来たのは、達成感ではなかった。



安心だった。


ただただほっとした。



長年続けてきたことが形になった。


絶対的な自分の中の一つのキャラ、特徴ができた。




自分でも時間をかければ、思い描いたものは実現できる。


自信が湧いた。


自分に対する捉え方が変わった。





変化


今までの自分は、お金や学歴によって保証された安全な未来に甘んじていた。

ぬるま湯に浸かりながら、がむしゃらに挑戦する人を遠目に見ていた。

でも、もうそれは過去の話だ。



今の自分は、

1人で行動することの寂しさを知っている。

必死になにかを生み出すことの痛みを知っている。

それが批判されるかもしれない不安を知っている。

自分と向き合うことは、とても苦しいと知っている。



留学が、カリフォルニアという環境が、色んな挑戦を教えてくれた。

そのおかげで、英語で、自分に一番足りなかった「自分の意志で自分を表現する」ことができた。

ようやく自分の殻を、破ることができた。



大切なのは、等身大の自分を、形にして世に出すということ。


そこから他人の評価で何が良かったか悪かったかわかるし、

どうせ駄目だと諦めたら何が駄目かも分からない。

とにかく始めてみることが大事だと思った。




作ったラップは、配信予定だ。


世の中に発信することに、もう不安はない。


ただ少し、わくわくしている。




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